繊維を研究して約40年間 (鈴木孝さん)

ただ単にデザインが良いというだけでは、良いくつしたとは呼べない。履き心地や、履いて洗濯してからも状態を極力保てることなどの結果を加味して、(時には捨てる時になって)「このくつしたは良かったな」と思うものである。その「良かった」ものを支えているのは、繊維そのものを知り尽くした人なのである。

株式会社ナイガイ 企画開発部 技術課
鈴木孝さん


遡ること四十数年以上前の事。当時高校生だった鈴木さんが衝撃を受けた一つの記事があったそう。某大手下着メーカーが持つ研究所について書かれたものである。衣類が作られる背景にはただ単純にデザインがどうのこうの、ということの前に〝繊維〟という学問が存在しており、理系の道を進んでいた青年にとってはまさに今後の進むべき道の候補として目に止まった記事なのである。
その結果、繊維学部のある国立大学へ進学、繊維工学を在学中に学んだ。

「糸を紡績したり、生地を織ったりしました。風合いやその繊維から得られる快適さを研究していました。」

大学卒業後に株式会社ナイガイへ入社。最初は技術部に配属されてインナーの開発などに携わり、その後部署異動を経験しつつも常に縁の下の力持ちと言えるような、会社のキーとなるものづくりのサポートをしてきた。
40歳直前で品質管理を受け持つ。「会社として、保証できるものを世に出していく」ものづくりを支えてきた。強度や安全性、色落ちに関する検査など、ちいさいくつした1足1足それぞれに向き合ってきた。
お客様から寄せられるクレームの原因を突き詰めるような検査も可能な限り自社で取り組んできた。

「うちの良いところは、社内で検査をしていること。なぜこうなってしまったのか、という原因が、外の検査機関に出してしまうとわからないことが多いです。というのも、あくまで丸かバツか、という結果しか出てこないので。でも目の前でその検査をやっていれば、より具体的な原因がわかってくるので、そのくつしたの本質と向き合っている、という感じがします。」
さらに、スポーツ医学、理学療法など、身体の働きについて研究をしている某大学とも取り組み、少し変わったニッチな商品づくりに携わった経験も。
例えば、高齢になった人が寝たきりにならないように筋力低下を防止するため、歩行するたびに負荷のかかるタイツや(※1)や、ストレスを抱える人の多い現代にぴったりな、副交感神経を優位にさせる快眠用のくつした(※2)など、外部の知識と鈴木さんの知識を合わせたハイブリッドなアイテムを作ってきたそう。

※1:現在は販売終了
※2:快眠用のくつしたはこちら

今年2月に60歳となり定年を迎えたが、今でもその知識と経験を現場に還元している。40年という歳月を繊維に費やしてきた姿は、退く日が想像し難いような気もしたが、プライベートについて聞いてみると多趣味な様子がうかがえた。

「同じ大学の後輩も社内にいるので、ぜひ彼にも話を聞いてみると良いと思います。」

すでに彼のバトンは受け継がれているようだ。

株式会社ナイガイ 企画開発部 技術課
鈴木孝さん

2018年1月までは、技術課の課長としてマネジメントをしていた。
週末は昔からの仲間と相模川や湘南の海岸などへ釣りに行ったり、愛犬(ボストンテリア)との散歩を楽しんでいるそう。

※掲載内容は、すべて記事掲載当時の情報となります。

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